フランス環境問題(大気汚染対策)

【大気汚染】
世界中どこの大都市に住んでいようとも感じるのは新鮮な空気を吸いたいということ。東京にいた時には、アパートの窓に高速道路からの「すす」がたまっていたり、ロスアンジェルスにいた時にはよく飛行機の窓から灰色がかったスモッグの層を眺めていました。そしてパリ。ここもまた自動車が所狭しと走り回ってい ます。こんな狭い所にそんな車はいらないでしょうと思うような大きな車が走っていたり、通りには人間の数より駐車されている車の数のほうが多かったり。どこも同じです。

では、自動車の排気ガスがどのくらい世界各国で排出されているか見てみましょう。ここでは窒素酸化物に着目。自動車の排気ガスがもとで発生する酸化物で、光化学スモッグや酸性雨などの原因となります。その他、大気汚染物 質には硫黄酸化物(大気汚染や酸性雨などの原因となる酸化物で,石油や石炭など硫黄分が含まれる化石燃料の燃焼により発生するもの)、一酸化炭素、非メタン炭化水素が含まれます。

窒素酸化物総排出量2002年
(1,000トン)
1人当たりの排出量2002年
(kg)
日本 2,018 15.8
韓国 1,136(1999年)
トルコ 951 14.1
アメリカ 65.3
カナダ 2,459 78.4
メキシコ 1,152(1998年)
アイスランド 26 90.5
アイルランド 121 31.0
イギリス 1,587 26.3
イタリア 1,267 21.8
オランダ 430 26.6
ギリシャ 318 28.9
スイス 90 12.4
スウェーデン 242 27.1
スペイン 1,432 34.8
デンマーク 191 35.5
ドイツ 1,417 17.2
ノルウェー 213 46.9
フィンランド 211 40.5
フランス 1,350 22.7
ポルトガル 288 27.8
オーストラリア 1,691 86.0
ニュージーランド 204 51.8

出典:OECD, OECD Environmental Data Compendium 2004

世界中で懸念されている環境問題。次はパリで行なわれている主な対策方法をご紹介していきましょう。

パリのトラム
フランスパリでは、2006年12月16日に、約70年ぶりに路面電車が復活。自動車によって占領されてしまったパリの町を、クリーンな交通手段で緩和させようというねらい。もともとパリに路面電車が登場したのは19世紀。地下鉄や自動車の普及にともなって姿を消してしまっていました。パリ市内の交通渋滞 や排気ガス汚染対策として見直され、今回パリ南部に一部開通。路線には芝生も敷き詰めてあり環境にやさしい交通機関を目指します。今後はパリを囲むように 路線が延長されていく予定です。

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トラムウェイパリ オフィシャルサイト

パリのレンタルサイクル
同じくパリ。2007年7月15日、パリのレンタルサイクルが始動。フランス語の自転車「veloヴェロ」と自由の「liberiteリベルテ」を掛け合 わせて「Velib’ ヴェリブ」という名前。こちらも車増加による交通渋滞を解消し、大気汚染も減らそうという環境対策の一環で、世界の主要都市で初の大規模な政策となりま す。

300メートルおきに750箇所の駐輪場が置かれ、1万600台の自転車が用意されています。2007年度末までに駐輪場の数は2倍 (1451箇所)に増やされ、自転車も2万600台に拡大される予定。自転車を利用したい人は、自転車を借り、目的地近くの駐輪所に戻せばよい。毎日24 時間常に利用可能。まずは専用カード購入から。
カード1日用  —1ユーロ
カード1週間用—5ユーロ
カート1年間用—29ユーロ
専用申し込み用紙は郵便局や役所、またインターネットなどで手に入ります。14歳から17歳の若者は親の承認が必要。

コンセプトはシンプルですが、ヴェリブは都市の戦略的思考、計算が必要とされます。それは、これらの利用料ははじめの30分のみで、次 の30分で1ユーロ、次の30分で2ユーロと順次高くなっていくのです。そして1時間30分が過ぎると、30分ごとに4ユーロが追加される計算。もちろん 30分ごとに駐輪場に戻して乗り継げばカード代以外は何もかかりません。こういった戦略はヴェリブ自転車が、あくまで短距離使用にのみ活用されることが念頭に置かれているため。自転車を返却しないとクレジットカードから150ユーロが引き落とされることもお忘れなく。

ヴェリブ自転車は、やや重く22kg、毎年2万km走行に耐えられるようデザインされています。前にカゴとと小さなロックがついています。

またパリの他に、リヨンではこのようなレンタルサイクルが2005年にすでに開始されています。リヨンでは「Velo’vヴェロヴ」。

町の人の声は:

パトリシア B (フレンチアメリカン 60歳) 「ヴェリブが成功するとはそんなに思わないわ。だってフランス人って他人の持ち物を 大切にしないもの。特にそれが誰のものでもない時は。」

ピエール C (フレンチ 19歳) 「このプロジェクトは成功すると思うよ。スイスに住んでいた時に同じものがあった。便利だし、行きたい所どこにでも行けるしね。」

キャテリーヌ P (フレンチ 29歳) 「よいイニシアティヴにはなるでしょう。でも私はパリで自転車なんて乗らないわ。早死にしたくないもの。道路の交通安全が心配。」

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ヴェリブ オフィシャルサイト

以上The Paris Times

パリ市によると、すでに約1万人がこのヴェリブプログラムに加入。そして安全のため交通ルールの取締りにも力をそそぐ。交通規則に反するものは、歩行者、自転車利用者、二輪車運転者、あるいは自動車運転者であろうと厳しく取り締まる姿勢。赤信号発進、歩道や一方通行路、またバス専用車線 通行などは主要な違反。罰金は99ユーロ。ヴェリブ開始にともない、より一層自転車利用者に関して詳細に検討する予定。

2006年度、自転車が関わった交通事故数が577件。506人の負傷者と2人の死者。そのうち60パーセントが二輪車と自動車による ミス。バス専用車線を通る乗り物や自転車専用車線を通るバイクなどは厳しく処罰されます。罰金135ユーロ。

以上フリーペーパーMetro

パリの自動車レンタル
パリ市は、自転車レンタルの他、もう一つのオプションを準備中。それは「autopartageオートパルタージュ」、つまり車をシェア(共有)するこ と。すでに2,000人のパリジャンがこのプロジェクトに参加しています。そのプロジェクトでは、最低30分から車を借りられます。いくつかの基準に達す れば、民間のレンタル会社が市のラベルを使用できるというシステムで、自動車は24時間利用可能で、使用15分前まで予約が可能なこと、そして車はヨー ロッパの大気汚染対策項目に対応していることなどが条件。1990年代に、この車をシェアするというアイデアが成功しているスイス、ドイツ、オランダで は、6~10台分の自動車が1台のシェア自動車によって置き換えられています。

以上The Paris Times

自動車数減少傾向
2006年度のパリ市公共交通機関の総合評価で、2005年に比べMetro(地下鉄)利用が2.7パーセント、RER(パリ市内近郊線)が1.4パーセ ント、Noctilien(夜間バス)が31パーセントそれそれ上昇したことを発表。バスは工事のため2006年度には1.4パーセント減少していたが、 再度上昇傾向。自動車による移動はそれに続き3パーセント減少。二輪車は変動なし。

2007年登場の自転車は2006年度と比べ、すでに44パーセントの伸び。またアクセス可能となった地域 数も11パーセントの上昇(137,000箇所)。さらに2006年度交通事故数は2005年に比べ8パーセント増加。2007年第一四半期においては逆 に2006年度の30人の死亡者に対し、20人の死亡者数。

以上フリーペーパーMetro

ここ数年、パリの様子ががらりと変わりつつあります。トラムウェイが設置され、町のいたる所にはヴェリブの駐輪場が。そして、今まで駐車のためにとってあった道路上のスペースが削り取られ、道が細くされています。何とか自動車数を減らそうという市の取り組みが伝わってきますね。自転車の利用が一般化するのかどうかにも興味がありますが、上で述べられているように交通事故が増えないかどうかという懸念も残ります。町では結構この自転車を利用している人を見かけますが、交通量の多い場所をあの重たい自転車に乗っているのを見るとたまにヒヤッとすることも。

さまざまなプロジェクトが開始され、大きな結果を見るのはまだ先かもしれませんが、成功して大気汚染問題解決への一歩となって欲しいものです。

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